いま、クルマやチューニングとどう向き合うか。
その問いに、私たちAutoExeは”趣味性”と”乗り味”で応えたい。

この時代、何のためにクルマに乗るのか?

歴史的に見れば、人々にとってクルマとは、実用性にとどまることのないステイタスと趣味性を備えた憧れの対象だった。だが、その憧れは、近年希薄化してきている。ライフスタイルの多様化によるステイタス性の低下や、燃費や排ガスといった環境への関心の高まり。マーケティングと効率の優先によって均質化したクルマ造り・・・理由は様々であろうが、交通網の発達した都市部では既にクルマを手放す人たちが増えているように、合理的な眼でみればクルマはもはや特別な価値を持った存在ではなくなってきている。
では、「移動のための手段」以外に、あえてクルマに乗ることの意義とは何か。極端に言えば、合理的実用性から乖離した道具の存在意義とは何か。私たちAutoExeは、クルマをただの機械とは考えられない。あたかも命あるかのような存在として、ともに走り、ともに暮らす日々を愛したいと熱望している。手を加えない量産の状態でもクルマは充分に魅力的だ。しかし、より積極的にチューニングのスパイスを与えることで、所有する歓びや走る楽しさが深まり、さらには乗り手の個性や自己表現にまで高められて行く。その輝きを追い続けたいと願っている。

突き詰めれば、それは「趣味性」なのではないか。

クルマの価値を、たんなる日用製品や合理的価値のポジションにとどめたくはない。精神的な高揚感をもたらす存在として向き合いたい。ある人にとってはカメラが、またある人にとっては腕時計がそうであるように。とすれば、拠って立つ場所は「趣味性」ではないか、と私たちは考える。言いかえれば、趣味としてクルマにプライドを保てるか、大げさにいえばクルマとどう生きるか、である。エコや社会性も踏まえつつその観点から見つめた時、チューニングのあり方にもひとつの道筋が見えてくる。
それは、「スペックや速さを追求したチューニングの終焉」であり、「自分らしさのアイデンティティ獲得の始まり」である。一般的にクルマのチューニングというとパワーを上げたい!速くコーナリングしたい!目立ちたい!といった姿が連想されるが、少なくとも私たちが最重要視するストリートにおいては、絶対性能を高めるチューニング手法は意味を成さなくなりつつある。
なぜなら、現代の量産車は過不足ない走行性能と快適な居住性を高いレベルで両立し、機械としての完成度は極めて成熟しているからだ。一定の“Fun to Drive”ならメーカー出荷のままの吊るし状態で不満なく楽しめるし、メーカーのアイデンティティが表現されたスタイリングも没個性とは言えない。異論があるかもしれないが、私たちの中ではいたずらにスペックを上げた仕様や見た目勝負のチューニングは終焉している。それゆえ、趣味としてのクルマにフォーカスするなら、チューニングの道筋も、テクノロジーの進化によって薄められたクルマたちの個性や魅力をより鮮明に引き出す方向が求められるはずである。

趣味性を実現するためのアウトプット。それが”乗り味”

では、その趣味性を担保するチューニングとは、具体的にはどのようなコンセプトであり技術なのか。私たちは2013年のキーワードとして“乗り味”を掲げた。乗り味・・・言葉は抽象的だが、そこには私たちが取り組み続けてきた「過渡特性の最適化」の工学理論や、より洗練されたドライビングのための「感性チューニング」の経験値が集積されている。
例えばドライバーの意図を予知したかのごとく、ステアリングの微妙な操作に瞬時に反応する操縦性。レーンチェンジでの路面の轍やうねりの感触を不快感なく伝えるボディ剛性。過度に遮断された速度感を復活させ、より濃密な加速感やアクセルワークを楽しめるサウンドチューン。トータルなスポーツ度を上げながら、助手席や後席の快適さを損なわない角を丸めた乗り心地・・・。量産スペックでは封じ込められていた能力や不問にされがちな味付けを解放・拡大し、豊かな趣味性=”Fun to Tune“の世界に徹底してこだわっている。無論、走行性のみならずスタイリング面も同様。量産仕様で気になる煩雑なデコレーションを排して、よりシンプルかつダイナミックな表情へ変貌。ひと目見た瞬間の明らかな際立ちを追求し続けている。

生い立ちと理論に裏付けされたAutoExe流の”乗り味”。

私たちのスポーツチューン。そのルーツには1997年のAutoExe設立以前のマツダスピード時代より参戦を重ねた「ルマン」が挙げられる。フラットな路面のサーキットと異なる一般公道を含むコースを24時間走り続ける究極の耐久レースは、F1に代表されるスプリントレースとは異なり、市販車に直結する耐久性や快適性が求められる。まさに”乗り味“の重要さが、そこにあった。
そして時を重ね現在の第4世代の製品に至るまで、私たちは一貫してサーキットのみで通用する手法とは一線を画するストリートベストのチューニングを主張してきた。スタイルにおいても機能においても大人の選択眼に応えられる高品位性を持つこと。数値至上主義ではなく、心を“快”にする感性チューニングを目指すこと。その感性チューニング実現のために、クルマとドライバーの期待を同調させる過渡特性を磨くこと。さらには、エコやマナーといった社会情勢とも共存すること・・・。それらの意志を広く浅くではなく、深く豊かに注ぐためにマツダ車に限定した車種発想のトータルチューニング「マツダ車個性化プロジェクト」にこだわり続けてきた。2011年、マツダ㈱でサスペンションの権威としてRX-7やロードスターの開発主査を歴任した貴島孝雄氏をスーパーバイザーに迎え、氏の提唱する「動的感性工学理論」によって私たちの主張の技術的背景を強化した点も、その一環である。
この生い立ちや理論に注目して頂ければ、2013年の私たちのキーワード“乗り味”が、表層的な快適さと見栄え感に特化して本質である走りのポテンシャルアップは二の次とした流行りのコンフォート系とは異なることを理解して頂けるのではないだろうか。私たちが考える「スポーツライクな快適性」とは普段使いに支障が少ない車高や乗り心地をきちんと確保した上で、不特定多数のための“甘い”味付けから脱却することにある。ダイレクトで敏捷な走りを求めるドライバーに気持ちよく反応する、しなやかでしたたかな走り。そんな、ちょっと辛口な操縦性を私たちは送り届けて行きたい。

“A New Driving Sensation”。その歩みを止めることなく。

“A New Driving Sensation”…これは、「常に新しい走りの感動を追求し続ける」という私たちの旗印、企業姿勢の宣言である。量産車の枠を超えて際立つスタイリング。まるで運転者の身体の延長とも感じられる一体感に満ちた走り。チューニングの本質を見据え、自動車メーカーにはない少量生産システムやフレキシブルな小さな組織といった利点を活かして、変化する時代を捉えたセンセーションを提案し続けたい。
その最新例のひとつが、ストリートスポーツサス・キット。たんに絶対性能や限界の高さではない味付けの奥深さを具現化して、まさに “乗り味”の醍醐味を証明できるシリーズと確信している。理念や意志をぶらすことなく、着々と正統的チューニングの裾野を広げて行くAutoExeの「マツダ車個性化プロジェクト」。私たちのさらなる進化と拡大にご期待いただきたい!