クルマの進化とともに歩みながら
私たちは、人とのときめく関係を深化させ続けたい。
かつてない変化の時代へ。しかし、その進化には代償もひそむ。
人間によるクルマの制御は、遠からず不要となるのか。人工知能の波は1世紀以上に及ぶクルマの歴史をいま大きく変えようとしている。完全自動運転の実用化へ向けて、開発スピードを上げる世界の自動車メーカーやIT産業。また動力源のEV化も進み、欧州の一部では2040年までに環境面からエンジン車の販売を禁止する方針が発表されている。誰もが安全かつイージーに移動できる。温暖化や大気汚染から地球を守る。このようなクルマの進化を、私たちAutoExeも歓迎したい。
だが、進化には代償もひそむ。みずからの意志で、みずからの手でクルマを操る愉しみや醍醐味は失われ、ドライバーはパッセンジャーの一人に過ぎないこととなる。そこまでは極端な話だとしても、誰もが気づかいなく運転できる現代の量産車は、その反面ドライバーへのインフォメーションや濃密な対話を希薄にさせつつあるのではないだろうか。
ハードウェアの優劣だけでは語れない。趣味性を高める「乗り味」を求めて。
ジャンルは異なるが、IT化によって音楽の楽しみ方もまた一変した。デジタル音源のダウンロードが一般的になり、スマートフォンで再生可能に・・・多くの人々が膨大な量の音楽をどこでも簡単に楽しめる環境となっている。その一方、一部の人たちの間でアナログレコードが見直されている。アーティスティックな紙ジャケットからレコード盤を取り出しターンテーブルにセット、針を落とし、レコード盤が回転するのを眺めながらそんなプロセスと温かみのあるサウンドを愉しむ。音楽を聴くという観点でいえば非効率的だが、趣味として捉えるなら豊饒な時間の過ごし方といえよう。
クルマも同様に、単にハードウェアとしての優劣だけではなく、ドライバーが味わい深いハンドリングや胸のすく加速感といった「乗り味」=趣味性を求めるならば、チューニングがそのきっかけとなり得る。ドライバー中心のクルマ作りを主張するマツダ車でも、この観点においては見直す余地があるのではないだろうか。
ではその「乗り味」について、AutoExe のチューニングはどのような深化を提案できるのか、以下、私たちの「ストリートベスト」について具体的にプレゼンテーションしたい。
指標とするのは「ストリートベスト」、そして「感性チューニング」。
クルマの愉しみ方にも、絶対的スペック追求型から、車高の低さや見た目の変化感を競うものまで多様だが、私たちの狙いは「ストリートベスト」。公道において良識ある大人が運転を愉しむためのスポーツチューニングだ。そのための“こだわり”は、量産車の設計思想を見極めたうえで、運転キャリアやスキルがさまざまな不特定多数のために必要な快適性や使い勝手などを精査し、そのマージンをスポーツの領域に振り向けることにある。
そして、“こだわり”を実現する技術的方法、すなわち“ことわり”が「感性チューニング」だ。カタログなどに表示される最高出力やバネ定数といったスペック=最大数値を高めるのではなく、そこに至るまでの瞬間、瞬間の動きをドライバーがどう感じるのか?つまり「過渡特性」のメカニズムをシビアに分析し、特性を作り込む。私たちが目指す、ドライバーの動的感性にシンクロする「乗り味」の追求である。
機能やスタイリングを「ストリートベスト」へと作り込む。
そのシンボリックな例がサスペンションだ。具体的な内容を挙げれば、乗り味の中核となるダンパーは、すべての製品でロールが始まるピストンスピード0~0.1m/secまでの微低速域の減衰力を一気に立ち上げて、ステアリングを切り始めた瞬間からのグラッとロールする感覚を抑えている。単に減衰力を高めるのではなく、独自の減衰比に基づき動き始めから最大ロール角に至るロールスピードを的確にコントロールすることで、ドライバーとクルマとの人馬一体感を鮮明にしている。
また、最大ロール量を決定するスプリングについても、サスペンションストローク、ロードクリアランスなどに配慮し、低すぎず、硬すぎない、量産車比車高-20mm、バネ定数110%程度を基本としている。これらの設計値は、私たちが目指すストリートベストから弾き出されているのだ。
このカタログ後半の技術ページでは、例に挙げたサスペンションを筆頭にボディ補強や吸排気、ブレーキ系などジャンル別に理論と事実に基づいた解説を掲載している。メカニズムの理解は知的な感性を磨き、ドライビングの歓びをいっそう深める。是非ともご一読いただきたい。
さらにスタイリングについても静的感性を磨き、量産車と明らかに違う独自の佇まいを表現しながら、これ見よがしの自己主張に陥らない端正なストリートベストのフォルムを提案している。クルマ本来の美しさを際立たせるべくマークレスフェイスに統一しているのもその意図である。 “Tune COOL!”をテーマにした05Sシリーズではミリ波レーダー機能やアクティブボンネット(歩行者保護システム)といった安全装備と融合させ、社会性にも配慮している。
“A New Driving Sensation”私たちの「マツダ車個性化プロジェクト」。
1997年にAutoExeが設立されてから20年の年月が流れた。「マツダ車個性化プロジェクト」を掲げ、ロードスターやRX-8といったスポーツカーに限らず、SUVやセダン、コンパクトカーまで一貫してマツダ車を専門にチューニング。私たちの開発コードである初代の01から05世代に至るまで、そのあり方を時代や環境に合わせて進化させてきた。そして2018年は、想いを新たに06世代へとステップアップする。
“A New Driving Sensation”—量産車の枠を超えて、際立つスタイリングとスポーツ感覚溢れる走りへ。チューニングが、人とクルマをより豊かな感動で包み込むように。良識ある大人の趣味として評価され続けるように。私たちAutoExeの挑戦にこれからもご期待いただきたい。