ロードスター(NA)用、新サスペンションキット開発進捗情報②
今回は、引き続きNA用サスペンションキットなのに「なぜ、NB用をベースにしたのか?」・・・をバンプストッパーの視点から掘り下げようと思います。そのためには、サスペンションスプリングとバンプストッパーの関係をイメージしていただく必要がありますので、最初にその関係から解説します。
(1)サスペンションスプリングとバンプストッパーの関係
サスペンションのストロークは、主に「①スプリングだけで担う荷重域」と「②スプリング+バンプストッパーで担う荷重域」があります。
ストロークが始まると、スプリングが縮み始めてバンプストッパーにあたります。更にストロークが進むとスプリングとバンプストッパーが共に縮んでいき、最終的にバンプストッパーがこれ以上縮みきらない剛体になるところまでストロークします。ここのポイントは、①→②へ移行の仕方だということは、イメージできますね。
では、次に実際のバンプストッパーを見てみましょう。
(2)NBとNAのバンプストッパーの違い。
<NB用>
ウレタン製で、伸縮しやすい構造です。手で押し潰すと、始めは、殆ど抵抗を感じることなく縮み、更に潰すと徐々に硬くなり、最終的には手の力では潰せなくなります。
バンプタッチした瞬間は柔らかく、ストロークが進むに従って徐々に硬くなる構造です。
<NA用>
ラバー製で、伸縮しづらい構造です。手で力を思い切り加えても殆ど縮みません。ダンパーが底付きして壊れないように強制的にストロークを規制する構造です。
(3)サスペンションストロークとバンプタッチまでの距離
サスペンションのストロークは、バンプストッパーに触るまで(バンプタッチ)のストローク量ではなく、サスペンションに2.5G加えてバンプストッパーの縮んだ分も含めたストローク量で比較します。(因みに、NBもNAもほぼ同じです。)
ただ、NBとNAは、ストロークは同じでもバンプタッチするまでの距離が異なり、NBがNAよりも早くバンプタッチすることが見てとれます。では、次にバンプストッパーの特性と併せて、実際にどのような影響があるかみてみましょう。
(4)ストローク量とバネ定数の関係
右のグラフは、ストローク量に対してのバネ定数の変化を示した概念図です。前出のストロークの配分図では、それぞれが担う荷重域としましたが、スプリングもバンプストッパーもストロークが進むことで、「荷重域が増す=受け持つバネ定数が上がる」・・・意味はほぼ同じだと思ってください。
ここのポイントは、「バンプタッチポイント」通過後のバネ定数の変化です。NB(青線)のバンプタッチポイントは、ストローク量に対して早めですが、バンプストッパーがしなやかに縮むので、バンプタッチポイント通過後でも、滑らかなカーブを描くようにバネ定数がアップしていきます。逆に、NA(赤線)のバンプタッチポイントは、ストローク量に対して遅めですが、バンプストッパーが硬いため、バンプタッチポイント通過後、急角度で直線的にバネ定数が立ち上がります。
この違いを実際の運転に置き換えると、カーブに進入しステアリングを操舵すると、ロールが始まって徐々に深まります。そのロールが深まる過程、つまり、バンプタッチポイントを通過した瞬間の挙動が、両車で大きく異なります。
NBは、バンプタッチポイントを自然に通過しますので、違和感なくロールが深まります。しかし、NAは、バンプタッチするまで、スプリングだけである程度踏ん張りますが、バンプタッチした瞬間、バネ定数が急激に上がり唐突な挙動になってしまいます。
どちらが、ドライバーの期待値に沿ったロール感を得られるか一目瞭然ですね。前回のアッパーマウントに加えて、NB用をベースにした理由がお分かりいただけたのではないでしょうか。
サスペンションキットの仕様が決まったら、次は実践編です。
まずは、車両のスペックからバネ定数を決め、AE流の減衰比により各速度域の減衰力を導きます。ただ、机上の理論と経験である程度できますが、最後に頼りになるのは、デジタルではなく自分たちの感性評価です。次回更新まで、少し間が空きますが、お楽しみにお待ちください。
Posted by A.Asanuma