CX-8用ストリートスポーツサス、開発進捗情報。

CX-8用チューニングキット「KG-06」の発売を機に、お問合せを多く頂いているストリートスポーツサス・キット(SSキット)。今回は、その開発進捗状況をお伝えします。
SSキットは、数あるサスペンションパーツの中でも、バネとダンパーを一緒に開発できるので設計自由度が高く、私たちが目指す「ストリートベストな乗り味」をトコトン追求できるパーツです。最初にその乗り味をグラフを使って説明します。

図は、弊社のカタログやwebサイトで度々登場する「減衰比・減衰力グラフ」で、その中の減衰比曲線(赤線)が、ストリートベストな乗り味の「設計図」といっても過言ではありません。
なぜなら、私たちは、この「減衰比曲線」を指標に、SUV・スポーツカー・コンパクト問わず、一貫して設計してるからです。因みに、この曲線のことを、私たちの社内では「ちょうちんアンコウ」と言ってます。横からみた「ちょうちんアンコウ」に似てるから・・・です(汗)

「減衰比」は、バネの硬さとダンパー減衰力のバランスのようなもの。言い換えれば、バネの硬さに対して、ダンパーをどのぐらいの割合で効かせるか・・・ですので、「%」で表します。

グラフは、青帯の「初期ロール域」が最も減衰比が高く、黄帯の「乗り心地・突起域」→赤帯「悪路域」に従って、下がっていることが読み取れます。この狙いは、ステアリングを操舵し、車体がロールし始める時に、バネに対してダンパーの効きを強めることで、ジワっとした安定感を作ります。

「乗り心地・突起域」以降は、ダンパーが突っ張り過ぎないように減衰力の立ち上がりを抑えることで、乗り心地や走破性に配慮させています。・・・あまり、長くなってしまうと、読み進めるのも大変ですので、もっと詳しく知りたい方は、サスペンションのコンセプトをご覧ください。

では、CX-8の開発レポートです。
基本スペックは、クルマの車重やディメンションを元に机上の計算で割り出すことができます。
最初にバネの設計です。バネの硬さは、最大ロール量を決めるので、量産に対し110~130%にしたバネを試作します。
ダンパーは、試作バネに対して、減衰比を基準に、総減衰力(縮み・伸びを合計した減衰力)を設定します。
更にそこから「縮み側」と「伸び側」に振り分けます。振り分け方の基準は、乗り心地への影響大きい「縮み側」を控えめに、「伸び側」の減衰力を高めて、総減衰力が減らないようにして試作ダンパーを設計します。

・・・机上できるのは、ここまで。
ここからは、試作を実車装着し、いつものテストコースで走らせて、「走る」→「評価する」→「交換する」→「走る」→を繰り返し組み合わせを変えてのドライバーの感性評価に移ります。

実際のクルマの動きをドライバーがどう感じるか?快か不快か・・・人の感性は、僅かな違いでも察知する能力があるので、最終的なスペックはアナログで決定します。こればっかりは優秀なスーパーコンピュータでも、AIでも難しいかもしれません。

で、下記が、机上計算→感性評価を経て、最終選考まで残ったバネとダンパーの仕様です。

<試作サスの詳細>※最終選考品
・バネ定数(量産比):S1=約110%  S2=約125%
・ダンパー減衰力(量産比):D1=やや高め  D2=高め

<開発ドライバーの感性評価>
【テスト①】前後:S1+D1→量産車より、ロール量は減ったが、もう少し減らしたい。またハーシュネス(微振動)が強く、全体的に乗り心地が悪い。

【テスト②】前後:S2+D1→バネ定数アップ分、ロール量は少なくなった。しかし、ハーシュネスは変化なし。先ほどのグラフで言えば、初期ロール域~乗り心地域付近の減衰力が高すぎるのが原因。試作ダンパーD3(D1より低め)を用意。

【テスト③】前後:S2+D3→ハーシュネスは無くなり乗り心地が改善した。しかし、フロント側の収束が悪く、ユサユサして落ち着きがない。

【テスト④】フロント:S1+D3 リア:S2+D3→全領域で、ロール量も抑えられ、乗り味にしっとり感が出た。

ということで、テスト④の仕様に決まりました。SUV特有の腰高感を感じさせない、キビキビした走りと乗り心地感・・・つまり、「ストリートベストな乗り味」になったと自負しています。

ダンパーであれば、その場で分解して、減衰力をチューニングすることができますが、バネが原因だった場合、試作を作るのに、2週間以上かかってしまいます。これって、発売日にダイレクトに影響しますので、結構なプレッシャーだったりします。
で、CX-8用ストリートスポーツサスは、現在、量産準備中!発売は、5月を予定しております。
「ザ・スポーツリムジン」に相応しい“足”に仕上がったと思います。ご期待ください。

Posted by J.Inazumi